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2007年6月の3件の記事

『混濁の夏』

カルロ・ルカレッリ/菅谷誠訳/柏艪舎

 第二次世界大戦終戦直後のイタリア。ファシズム体制下でキャリアを積んだデルーカ捜査官は、一転、逃亡者の境遇へと突き落とされてしまった(訳者あとがきより)。

 身を偽って逃亡中のデルーカに、ある日、パルチザン警察の巡査部長のレオナルディが声をかけ、、デルーカの偽の身分証を取り上げてしまった。そして、自分は今、初めての”政治がらみ”ではない重大事件を担当していて、それをどうしても自分の手で解決したいのだが、なにぶんにも経験が乏しい、あなたは、かつて警察学校長が”イタリア警察界最高の捜査官”とまで呼んだ刑事捜査官のデルーカという人にとてもよく似ている、だから、捜査に協力してほしい、と言い、デルーカの正体を知っていることをほのめかした。
 かつては、レオナルディの言うように周囲からあがめられていたデルーカだが、現在は政治情勢の変化に呑みこまれ、身を偽っている状態で偽の身分証をレオナルディに取り上げられてしまい、正体も知られている上に、レオナルディは銃を持っている。デルーカに選択の余地はなかった。レオナルディがとった宿に泊まらされ、レオナルディの仲間や周囲の人たちには「技師」と紹介され、レオナルディの担当する事件捜査を手伝うことに……。

 捜査の結果、どんな事実が判明するのか? 周囲の人間にデルーカの正体は見破られないのか? デルーカの将来はどうなってしまうのか? などなどを考えながら、どきどきしながら読みました。
 この本は、「デルーカ事件簿」シリーズの2作目。
時代の変化によって、追う身が追われる身に変わってしまう恐ろしい状況の中、本作の最後であることが起こるので、シリーズ3作目ではどんなふうになっていくのか、とても興味津々です。1作目を読んでいないので、1作目も是非読まなければ! 
 時代背景が時代背景なので暗い雰囲気が漂ってはいますが、妙にひきつけられてしまいました。
 

  

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『ガール』

奥田英朗著/講談社

 営業部の課長に命じられ、部下となった年上の男性社員に振り回される既婚女性。親友がマンションを買ったことに影響されてマンション購入を考えるようになり、気に入らないことがあればいつでも辞めてやると思っていた仕事が大事なものに変わってしまった独身女性。自分より年上の派手で若作りの独身女性社員の姿を見ながら、我が身に照らし合わせて複雑な思いを抱く独身女性。バツイチで小学一年生の男の子の母親でありながら、数年ぶりに多忙な部署に希望して異動させてもらい、そういう自分の立場を武器にせずに仕事を頑張ろうとする女性。一回り年下のハンサムな新人男性社員の指導を任され、周囲の女性社員の反応をおもしろがりながらも、自分も久しぶりにうきうき感に支配されてしまう独身女性。こうした30代のOLたちを主人公にした短編集。

 楽に楽しく読めるうえに、どの話も、読み終えたあと元気になれること請け合いです。

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『風に舞いあがるビニールシート』

森絵都著/文藝春秋

 6つの短篇からなる短篇集。

 ケーキショップのオーナー兼パティシェの作るケーキの魅力にあらがえずに、無理難題をつきつけられても、その片腕としての立場を蹴ることのできない女性。犬の里親を探すボランティアにかかる費用を捻出するために夜の仕事をしている主婦。正社員に近い労働時間を確保しながら大学の二部に通い、レポートの仕上げが間に合わないために、レポートの代筆をしてくれるという女性にコンタクトをとろうとするフリーターの男性。その他の主人公たちもそうですが、まっすぐに不器用にしか生きられないような人たちの姿を、著者は暖かい目で見つめながら書いていると思いました。

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