米澤穂信著/東京創元社◎ミステリ・フロンティア
25歳の紺屋長一郎は、大学を卒業し、高い求人倍率をくぐり抜けて無事銀行員となったものの、病気でやむなく退職し、故郷の町に帰ってきた。気力をなくし、無為に日々を過ごしていたが、貯金も底をつきそうになってきたため、なにかをやらなければ、という気持ちになり、犬捜しを専門とする〈紺屋S&R〉を開業した。だが、相変わらず気の抜けた状態だ。
そこに持ち込まれた依頼は、なんと人捜し。東京で一人暮らしをしていた孫娘宛の郵便物が祖父である自分のところに送られてくるようになり、そうしているうちに、孫娘は仕事も辞め、それまで住んでいたアパートも引き払っていたことがわかった。だが、両親にも、自分にもなんの連絡もないままである。郵便物が自分のところに送られてくるように孫娘が手続きをしたということは、きっと、このあたりにいるはずだから、捜してほしい、という依頼だった。紺屋は、断りきれずに引き受けてしまう。
そして、翌日には、高校時代の部活の後輩が雇ってほしいとやってくる。そして、断ろうとしているところに2件目の依頼が舞い込み、行きがかり上、後輩を雇うことになってしまう。
開業早々2件も依頼が持ち込まれ、後輩が雇ってほしい、とやってきたのには、わけがあった。町役場に勤めている友人が、仕事を始めた紺屋のためにと思って、顔の広さを利用してあちこちに声をかけてくれていたのだ。依頼は2件とも犬捜しではなかったが、引き受けてしまったため、最初の依頼を自分が担当し、2件目の依頼を後輩に担当させて調査が進んでいくが……。
気力をなくしているとはいえ、引き受けたからには、そして後輩を雇ったからには、それなりに働く紺屋が、調査を進めるのと並行して、少しずつ気力を取り戻していくようすも描かれています。力の抜けている主人公は、同著者の『春期限定いちごタルト事件』などに出てくる小市民を目指す高校生の大人版、という感じがしました。最後の一文には笑ってしまったけれど、これが現実だったら、笑ってなどいられないですね~。
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