カテゴリー「洋書ミステリ」の2件の記事

Mum's the Word

Mum's the Word/ Kate Collins/A Signet Book

 インディアナ州で花屋を営むアビー・ナイトは、自分の店の向かいに愛車のコルベットコンバーチブルを停めた。その直後、見知らぬ男が路地から飛び出してきて、コルベットの前に停めてあった車に乗り込み、大急ぎで車を発進させようとしてバックした瞬間、アビーのコルベットに追突してしまった。だが、男はそのまま走り去ってしまった……。
 そして、その朝、アビーは、店で働いているロッティーから、いとこのパールの離婚に関して相談される。今は花屋を営んでいるが、一年前にはロースクールに通っていたアビー。けれども、成績が悪く退学せざるを得なくなり、その後、花屋を営むことになったのだが、周囲の人間からは、そんなアビーでも法律に詳しいと思われるらしく、いろいろな相談をもちかけられてしまうのだ。

 コルベットに追突した車のナンバーの一部と車を運転していた男のようすを覚えていたアビーは、警察に通報するとともに、自分でも、その男と車を探し始める。さらに、パールが夫のハーディングから虐待を受けていたことを知り、ハーディングの周辺も探り始める。そして、二つの件が絡み合うようにして、アビーの周辺でさまざまなことが起こり始め……。

 いろいろなことに首をつっこんでしまうアビーは何度も危険な目にあうのだが、悪に目をつぶることができない性格。そんなアビーに、かつて警官だった探偵のマルコが手を差しのべ……。

 これは、アビーを主人公とする素人探偵ものでもあり、コージーミステリでもあります。アビーの営む花屋で働くロッティーやグレース、アビーと一緒に住んでいる幼なじみのニッキー、そしてアビーの両親など、個性豊かな人物がたくさん登場する、楽しく読めるミステリです。

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"Samaritan"

Samaritan Richard Price / Bloomsbury

 43歳のレイ(レイモンド)・ミッチェルは、生まれ故郷であるニュージャー州のデンプシー市に久しぶりに帰ってきた。30年近く前に卒業した母校で、ボランティアで作文を教えることになったためだ。だが、それから1か月もしないうちに、何者かに頭を殴られて重傷を負い入院することになってしまった。
 偶然そのころ、仕事で同じ学校を訪れたネレセ刑事は、同校の校長から、ボランティアで生徒に作文を教えてくれている男性が自宅で何者かに頭を殴られて重傷を負ったので調べてもらえないだろうかと相談される。被害者の名前を聞いたネレセは耳を疑った。レイとネレセは幼い頃の遊び友達だったうえに、ネレセは怪我をしたときにレイに助けてもらったことまであったのだ。
 ネレセは早速、レイの入院している病院をたずね、レイに話を聞いたが、レイは犯人のことを話したがらなかった。その様子を不審に思ったネレセは、数か月後には退職する身ではあったが、独自に調査を始めることにした。
 

 ネレセが調査を進め少しずつ真相が明らかになっていくようすと並行して、レイがデンプシーに戻ってからのできごとと、それ以前のレイの暮らしぶりが時を前後に行き来しながら語られていきます。
 レイには別れた妻と娘がいて、2人はこのデンプシーに住んでいるため、レイはそれまでなかなか会うこともかなわなかった娘とときどき会えるようになり、少しずついろいろなことを娘と話していくようになるのですが、そのようすにほのぼのとした気持ちになったり、レイを友人として気づかうネレセの気持ちに心が温かくなったり、刑事でありながらも身内に犯罪者がいて心労の耐えないネレセのようすにせつなくなったりしながら読みました。
 レイを殴った犯人がわかったとき、その人間の気持ちを思うと、それも、レイがデンプシーに戻ってからたった1か月の間に起こったことだと思うと、とても悲しくなりました。
 デンプシーを離れているあいだにいろいろなことを経験したレイは、デンプシーに戻ってから、昔の知り合いが困っているのを知ると金銭的に手助けしたりしたのですが、そのあたりが、タイトルの"Samaritan"(サマリア人)にあらわれているのだと思います。
 リンク先はハードカバーとなっていますが、わたしが読んだのはペーパーバックです。


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