カテゴリー「和書ミステリ」の13件の記事

『福家警部補の挨拶』

 小柄で縁無し眼鏡をかけた、髪の短い女性。それが、福家警部補。そんな容姿だから、現場にかけつけても警察関係者だと一目でわかってもらえないのに、なぜかいつも、現場到着時に、バッグの中から警察バッジがすんなりと出てこない。
 そんな警部補だが、捜査能力は抜群で、事件に追われて徹夜状態がつづいていても、しっかりと犯人を捜しあてる。この女性版コロンボともいえる福家警部補を主人公とするミステリ短編集。

 犯罪が行なわれる場面が先に書かれていて、読者としては犯人がわかっている状態なので、福家警部補が犯人を見つけ出していくようすを楽しみながら読んでいけます。
 軽いミステリを読みたいときにお勧めです。
 

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『辛い飴』

田中啓文/創元クライム・クラブ

 唐島英治は、ジャズバンド「唐島英治クインテット」の代表をつとめるトランペット奏者。バンドメンバーで息子といってもいいくらいの年齢のテナーサックス奏者、永見緋太郎が音楽にしか興味を示さないため、いろいろな場に連れ出して広い世界に触れさせようとしている。
 そうして出かけた場所や、演奏の場で出会う不可解な謎を、永見が解いてしまう、というミステリの短編集。唐島は、その記録役、といったところ。
 ジャズにかかわる人々に関する、ちょっとほろっとさせられる話や、野球や歴史にからめた話など、タイトルにいろいろな「味」がついた7篇の短篇ミステリが収められている。

 永見のキャラクターがおもしろいし、世間知らずの永見が謎を解いてしまうようすが楽しめる。
 ミステリを楽しみながら、ジャズについても少しずつわかるようになっていく二重に楽しめるシリーズ。シリーズ1作めの『落下する緑』からのファンです。
 各短篇の後には、作者お勧めのジャズレコード紹介もついています。

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『タルト・タタンの夢』

近藤史恵/東京創元社 創元クライム・クラブ

 ビストロ・パ・マルというフランスの家庭料理を出すレストランは、店長であり料理長の三舟、料理人の志村、ソムリエの金子ゆき、そして、ギャルソンの高築の4人でやっている、カウンター席が7つ、テーブル席が5つ、という小さな店だ。
 そこで起こるあれこれの謎を料理長の三舟が解決する、という設定の短篇集。
 

 三舟はフランスで修行中、その名前から「三船敏郎の親戚なのか」と聞かれたりしたことがきっかけとなって、無精ひげをはやし、長髪を後ろで束ねる髪型をするようになり、その一見サムライのようなようすが、三舟のトレードマークとなっている。

 一編一編が、心暖まる話で、しあわせな気持ちになれる。
 こんなお店に行ってみたいな、と思わせられる。

 北森鴻の『香菜里屋』シリーズのフレンチレストラン版、というような感じです。

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『桜宵』

北森鴻/講談社文庫

 東急田園都市線三軒茶屋の駅から少し入ったところにあるビア・バー「香菜里屋」。そこの店主の工藤が、客から持ちかけられた謎を解いていく話をおさめたシリーズ短編集の2作目。ときには、客のようすから、その謎を解いてしまうこともある。
 客と話をしながら、なにげなく工藤が料理を出すのだが、それが、とてもおいしそう。こんな落ち着いた、雰囲気のいいビア・バーに、行ってみたいな。
 

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『遠まわりする雛』

米澤穂信著/角川書店

 省エネ少年、折木奉太郎を主人公とするシリーズの4作目。
奉太郎たちが高校入学後から翌年の春休みまでに遭遇し、解決する謎解きを収めた短編集で、奉太郎たち古典部メンバー4人の身近に起きた事件などを扱っています。
 これまでと違って、人間関係が微妙に変化してきているあたりが読みどころでしょうか。
 次作では、奉太郎たちは2年生になっているのかな? 4人の関係はどうなるのかな? なんてあたりが楽しみなところです。

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『クドリャフカの順番 「十文字」事件』

米澤穂信著/角川書店

 省エネ少年、折木奉太郎の通う高校で文化祭が始まった。だが、奉太郎の所属する古典部では、ある問題を抱えている。文化祭で販売することになっている文集「氷菓」を、30部印刷する予定だったのが、間違えて200部印刷してしまったのだ。これが大幅に売れ残ってしまったら、大赤字になってしまう。なんとかして売らなければならない。
 一方、文化祭が始まってみると、あちこちで事件が起きていることが判明した。その事件を解決することで、古典部の名を広めて文集の売り上げを伸ばすことができないか、とあれこれ画策する奉太郎たち古典部員。
 奉太郎たちは事件を無事解決することができるのだろうか? そして、たった3日間の文化祭のあいだに、200部もの文集を売り切ることができるのだろうか? 

 省エネ少年、折木奉太郎を主人公とするシリーズの3作目です。

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『愚者のエンドロール』

米澤穂信著/角川文庫

 折木奉太郎の通う高校は今、夏休みだが、二学期に行われる文化祭の準備のために登校している生徒が大勢いる。この学校は文化祭が盛大に行われるのだ。奉太郎たち古典部のメンバー(4名)も、文化祭で販売する文集「氷菓」作成のために連日登校している。
 そんなある日、古典部員の一人、千反田えるが二年生のクラスで作っているビデオ映画の試写会があるから見に行こう、と部員たちを誘った。
 だが、見せてもらったビデオは途中で終わっていた。二年生の説明によれば、脚本を書いた生徒は脚本を書くことに精神的に参ってしまい、それ以上は書けなくなってしまったため、撮影も途中までで止まっているのだという。脚本を書いた生徒に結末をどのように考えていたかを聞けない状態なので、何人かのクラスメートが続きを考えているので、その内容を聞いて、ミステリとして矛盾がないか判断してほしいというのが、奉太郎たちを試写会に呼んだ二年生の目的だった。どうして奉太郎たちに、こんな話が舞い込んだのか? そして、その先はどう展開していくのか……。

 同じ著者の『氷菓』に続く、省エネ少年折木奉太郎を主人公とするシリーズの2作目です。

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『氷菓』

米澤穂信著/角川文庫

 「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことは手短に」がモットーの“省エネ少年”、折木奉太郎は、高校入学後、あることがきっかけで「古典部」に入部する。そして、そのモットーにも関わらず、古典部で一緒になった好奇心旺盛な同級生の抱く疑問を一緒に解かざるを得なくなり……。


 
 高校生たちが繰り広げる学校生活の中で起こる謎を解く話なので、最初のころは気軽に読めますが、少しずつミステリの度合いが濃くなっていく感じです。
 大人でも、高校時代を懐かしく思い出しながら読むことができます。
 でも、主人公たちと同世代の高校生が読むと、どんな感想をもつのかな?

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『犬はどこだ』

米澤穂信著/東京創元社◎ミステリ・フロンティア

 25歳の紺屋長一郎は、大学を卒業し、高い求人倍率をくぐり抜けて無事銀行員となったものの、病気でやむなく退職し、故郷の町に帰ってきた。気力をなくし、無為に日々を過ごしていたが、貯金も底をつきそうになってきたため、なにかをやらなければ、という気持ちになり、犬捜しを専門とする〈紺屋S&R〉を開業した。だが、相変わらず気の抜けた状態だ。

 そこに持ち込まれた依頼は、なんと人捜し。東京で一人暮らしをしていた孫娘宛の郵便物が祖父である自分のところに送られてくるようになり、そうしているうちに、孫娘は仕事も辞め、それまで住んでいたアパートも引き払っていたことがわかった。だが、両親にも、自分にもなんの連絡もないままである。郵便物が自分のところに送られてくるように孫娘が手続きをしたということは、きっと、このあたりにいるはずだから、捜してほしい、という依頼だった。紺屋は、断りきれずに引き受けてしまう。
 そして、翌日には、高校時代の部活の後輩が雇ってほしいとやってくる。そして、断ろうとしているところに2件目の依頼が舞い込み、行きがかり上、後輩を雇うことになってしまう。

 開業早々2件も依頼が持ち込まれ、後輩が雇ってほしい、とやってきたのには、わけがあった。町役場に勤めている友人が、仕事を始めた紺屋のためにと思って、顔の広さを利用してあちこちに声をかけてくれていたのだ。依頼は2件とも犬捜しではなかったが、引き受けてしまったため、最初の依頼を自分が担当し、2件目の依頼を後輩に担当させて調査が進んでいくが……。

 気力をなくしているとはいえ、引き受けたからには、そして後輩を雇ったからには、それなりに働く紺屋が、調査を進めるのと並行して、少しずつ気力を取り戻していくようすも描かれています。力の抜けている主人公は、同著者の『春期限定いちごタルト事件』などに出てくる小市民を目指す高校生の大人版、という感じがしました。最後の一文には笑ってしまったけれど、これが現実だったら、笑ってなどいられないですね~。

 

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『翳りゆく夏』

赤井三尋著/講談社文庫

 東西新聞社人事厚生局長の武藤は、ある朝、社長に呼び出された。翌年の採用内定者の一人が誘拐犯の娘であることが、ある週刊誌に載ってしまったのだ。社長に無断で興信所を使っていた武藤には、その内容が事実であることがわかっていた。だが、その娘は優秀だったために最終面接まで残ったのだし、採用するのは個人であって父親が誰かは関係ないと思ったから、最終面接をする重役たちには、そのことは伝えずにいたのだ、と答えた。社長は、至急、その娘に会って事情を説明するよう、そして、興信所を使うことを辞めるよう、また、決してこのために娘が採用を辞退することなどのないようにしろ、と武藤に命じた。一方で社長は、過去にある事件を起こして資料室勤務になっている梶という社員に、密かにその事件を調べなおすように、とも命じた。奇しくも、武藤と梶は、20年前にその誘拐事件が起きたとき、事件の起きた地域を担当する支局にいたのだった……。

 武藤は採用内定になった娘に謝罪するとともに、彼女が採用を辞退することのないように働きかけ、梶は20年前に事件を担当した警察や事件に関係のあった人々に話を聞いてまわり、少しずつ事件の核心にせまっていく……。

 中学生になったときに、育ててくれた両親から実の父親が誘拐事件を起こしたことを聞いて衝撃を受けながらも、自分の親は育ててくれた両親だけだと言ってけなげに生きてきた娘は、新聞社への就職をあきらめてしまうのだろうか……。
 最後はとても衝撃的でした。

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検事 霞夕子『風極の岬』

夏樹静子著/新潮文庫

 北海道釧路地検・帯広支部長になって帯広に単身赴任している検事、霞夕子の担当する事件が、北海道ならではの自然、気候、風物などを交えながらつづられている短編集。それぞれの短篇の始まりと終わりが、東京に残してきた夫宛に夕子が送るパソコンのメールという形になっている。

 一つひとつの事件が、北海道ならではの自然、気候、風物などの絡まったものとなっているため、それらについても楽しめます。

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『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』

桜庭一樹著/富士見ミステリー文庫

 山田なぎさ。13歳。中学2年生。10年前の大嵐で、猟師だった父が亡くなり、今は母と兄との3人家族。そして、ある問題を抱えている。
 そのなぎさのクラスにある日やってきた転校生、海野藻屑。自分のことを「ぼく」と呼び、自分は人魚なんだと言った。足をひきずって歩き、いつも大きなペットボトルを持っていて、しょっちゅうそれを飲んでいる。そんな2人が少しずつ近づいていき……。

 自分は人魚で、、人魚には10年に一度繁殖期があり、そのとき天気予報にはない大嵐がくる、そして今年はその年にあたるのだ、という藻屑のことばから、始めはファンタジーかと思いましたが、そうではありませんでした。最後は、すごく悲しい。こういう立場で、それをどうにもできない状態、周囲の人間は、それをほおっておいてはいけない!! と思うけれど……。 

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『ミステリアス学園』

鯨統一郎著/光文社文庫

 ミステリアス学園(大学)ミステリ研究会、通称ミスミス研に入った湾田乱人。ところが、今までに読んだミステリは松本清張の『砂の器』一冊だけ。ミスミス研に入った動機は、数学や物理が好きなので、数字を小説で表したいと思っているのだが、『砂の器』を読んで、ミステリならそれが実現できそうだと思ったから、だという。

 そして、ミスミス研は、そのとき、大きな岐路に立っていた。本格ミステリを部の研究対象から外そうという動きが出ていたのだ……。

 というわけで、ミステリについてなんの知識もない湾田乱人がミスミス研の部員たちから本格ミステリについていろいろな話を聞きながら知識を深めていく様子がつづられているのだが、それだけではなく、この話自体がいろいろな要素を持ったミステリともなっていて、何重もの楽しみが詰まった内容となっている。

 本格ミステリ作家の作品は読んだことのないものが多いので、この本の中で紹介されている本を読む楽しみもできました。巻末には、国内と海外の【ミステリ作家実質デビュー年区分表】や国内ミステリ作家の【本格ミステリ度MAP】なども載っていて楽しめます。

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