カテゴリー「和書、その他」の9件の記事

『阪急電車』

有川浩/幻冬舎

 関西の阪急電車今津線の8駅で乗り降りする乗客の物語をつづった短編集。

 週末に同じ図書館を利用している男女が、図書館からの帰りに偶然、同じ電車に乗り合わせ、ふとしたきっかけから口をきくようになった。社内でつきあっていた男性を女友達にうばわれ、二人の結婚式に出てきたばかりの女性。息子夫婦が出かけるため、あずかった孫娘と出かけた老婦人。などなど……。

 それぞれの話がほのぼのとさせられる暖かい話で、読んでいて優しい気持ちになれます。
 一篇一篇が独立した内容になっていながら、それぞれの話に出てきた人物が微妙に関わりあっていて、始発の宝塚駅から出発した電車が終点の西宮北口駅に着くと、そこにちょっとしたひねりがあるのも心憎い演出といえます。

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『野球の国のアリス』

北村薫/講談社ミステリーランド

 小学校時代に野球のチームに入って、女の子ながらピッチャーをしていたアリス。だが、中学生になると、クラブチームにも学校の野球部にも入れなくなってしまう。その岐路に立っているアリスの物語が、「不思議の国のアリス」の話にからめながら語られていく。

 好きなことを一緒にやっていく子供たちの思いや、スポーツには勝ち負けがあって当たり前であり、それをきちんと受け止めていくことの大切さ、そして、中学生になると野球ができなくなってしまうアリスのせつなさ……など、小中学生が登場人物とはいえ、結構ほろっとさせられる言葉などもありました。

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『Give & Givenの発想』

佐々木かをり/ジャストシステム

 ユニカルインターナショナル代表取締役でありCBSドキュメント・キャスター(1997年の本書発行時)である作者の、"Give & Take"ではなく"Give & Given"という考えかたに基づいて書かれた本で、「自分が動く、世界が変わる」という副題がついている。

「仕事と家庭の両立」というふうに「仕事」と「家庭」を分けて考えるのではなく、「仕事」も「家庭」もそのほかのものも含めてすべてが自分の車輪であって、そのすべてをうまくマネジメントしながら生きている、というふうに考えて、常に前向きに生きている著者からは学ぶべきことがたくさんあります。
「(これから)~しよう」ではなく、「(今)~している」と言える状態にすること、常に自分の「最高」で対応すること、なにかをするときには起こりえることを想定しながら、そうなったときにどう対応すればいいかを考えておくこと、どんなプレッシャーにあっても「私、楽しんでるかな?」と自分に問いかけることが大事なこと、愛を込めて仕事をする、肯定文で話して成功のイメージを作る、人と競いあって勝つのではなく、お互いにプラスの効果を出せる「ウィンーウィン(Win-Win)」という考え方などなど……。

 「こんなふうにものごとを考えるようになりたい」、いや、「考えている」と思いたくなって、気持ちが前向きになれました。

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『名画の言い分』

木村泰司著/集英社

 西洋で画家が自分の好きなように絵を描くようになったのは18世紀以降のことで、それ以前(古代ギリシアから)の西洋美術にはメッセージが込められていた。だから、18世紀以前の西洋美術は見るものではなく、「読む」ものなのだ、というのが、この本の趣旨。

 本書には、古代ギリシアの彫刻から19世紀末に描かれた絵画まで106点の西洋の彫刻や絵画がカラー写真で収められており、その一つ一つについて、どのようなメッセージが込められているのか、が解説されています。 古代ギリシアの彫刻に支えがなくなったのは、どうしてなのか? 古代ギリシアの彫刻は男性の場合、神様でも運動選手でもヌードなのだが、それはどうしてなのか? などから始まって、とても興味深い内容となっています。
 時代の流れ、宗教とのかかわりあいを通して発展してきた西洋美術の、2400年近い歴史を知ることのできる本で、初心者にとっても、わかりやすく解説されています。
 もちろん、この一冊を読んだからといって、すぐになにもかもわかるようになるわけではありませんが、この先、西洋美術を見るときには、今までとは違った見方をするようになることは間違いないでしょう。

 

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『チルドレン』

伊坂幸太郎著/講談社文庫

 うるさくて、一緒にいると周囲の目が気になってしまうような性格の陣内君。独特の考え方を持っていて、それが正しいと思っている陣内君。そして、心の裏表のない陣内君。
 そんな陣内君とのエピソードを、大学時代などの友人や職場の後輩が語る形の短篇集。短篇集だけれど、話はつながっていて、時代を前に進んだり、過去に戻ったりする形の長篇とも読める。

 こんな人が近くにいたら、自分が元気なときや余裕があるときは楽しめるけれど、暗い気持ちのときには疲れそう……。でも、やっぱり憎めない性格なんだろうな。同じ一人の人間を見るのでも、見る人によって違うふうに見えたりするのはおもしろいな、と思いました。

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『ガール』

奥田英朗著/講談社

 営業部の課長に命じられ、部下となった年上の男性社員に振り回される既婚女性。親友がマンションを買ったことに影響されてマンション購入を考えるようになり、気に入らないことがあればいつでも辞めてやると思っていた仕事が大事なものに変わってしまった独身女性。自分より年上の派手で若作りの独身女性社員の姿を見ながら、我が身に照らし合わせて複雑な思いを抱く独身女性。バツイチで小学一年生の男の子の母親でありながら、数年ぶりに多忙な部署に希望して異動させてもらい、そういう自分の立場を武器にせずに仕事を頑張ろうとする女性。一回り年下のハンサムな新人男性社員の指導を任され、周囲の女性社員の反応をおもしろがりながらも、自分も久しぶりにうきうき感に支配されてしまう独身女性。こうした30代のOLたちを主人公にした短編集。

 楽に楽しく読めるうえに、どの話も、読み終えたあと元気になれること請け合いです。

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『風に舞いあがるビニールシート』

森絵都著/文藝春秋

 6つの短篇からなる短篇集。

 ケーキショップのオーナー兼パティシェの作るケーキの魅力にあらがえずに、無理難題をつきつけられても、その片腕としての立場を蹴ることのできない女性。犬の里親を探すボランティアにかかる費用を捻出するために夜の仕事をしている主婦。正社員に近い労働時間を確保しながら大学の二部に通い、レポートの仕上げが間に合わないために、レポートの代筆をしてくれるという女性にコンタクトをとろうとするフリーターの男性。その他の主人公たちもそうですが、まっすぐに不器用にしか生きられないような人たちの姿を、著者は暖かい目で見つめながら書いていると思いました。

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『マンガ 聖書物語<旧約篇>』

樋口雅一著/山口昇監修/講談社+α文庫

 旧約聖書が、マンガでわかりやすく描かれています。
 英米の本を読んでいると、聖書からの引用を見かけることが多いので、一度聖書を読んでみたいと思っているのですが、なかなかとっかかれません。でも、この本は絵があるのでわかりやすかったです。

 でも、「監修者あとがき」に、「この本は聖書のストーリーを子供に理解できるようにマンガにしたものであったが、大人の読者から聖書のことがよくわかったという声が多く寄せられ、活字離れがここまで進んでいるのかと思うと複雑な気持ちだ」というようなことが書かれていて耳が痛いのではありますが……。(^^;)

 それでも、これで旧約聖書の大まかなところがなんとなくわかったので、<新約篇>も読み終えたら、少しずつ聖書を読んでみたいな、と思っています。

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『奇跡と呼ばれた学校 国公立大合格者30倍のひみつ』

京都市立堀川高校長 荒瀬克己著/朝日新書

 2002年春、「堀川の奇跡!」という派手な見出しが新聞や雑誌に載ったという。前年度6人だった堀川高校の国公立大現役合格者が、この年いきなり106人になったのだという。そのひみつは?

 その3年前に、堀川高校では校舎の前面改築が行われ、そのとき、この高校の先生たちは「中身をしっかりと考え、それに合わせた建物を造ろう」と考えたという。

 戦後、京都の公立高校入試は総合選抜というやりかたで行われていた。それは、公立高校普通科の入学定員全体がまず合格者とされ、次に基本的に小学校区単位で入学校が決定されるというシステムだという。そのため、学校差は生まれないというメリットはあったが、高度成長期になって私学が大学進学を軸にした取り組みを進めるようになって、公立高校はしだいに大学合格者数を減らしていったという。その後、京都の公立高校では志望校を選ぶ「単独選抜」も行われるようになったが、そのため、人気校、不人気校の格差が生まれてしまい、しかも、私立や国立の高校が大学進学の点で優位を誇っていることにかわりなはかった。だが、堀川高校に限らず、公立高校全体がだめだと考えられていた京都の状況のなかでも、大学進学の実績だけで高校を選ぶのはどうか、という意見もあり、公立高校の自主性を育てる自由さを保ちながら進学希望を実現する進路指導の充実を求める声がどんどん大きくなっていったという。
 そんななか、市立高校の内部から「学校を変えたい」という動きが起こりだし、堀川高校も例外ではなかった。本書の著者を含めた4人の先生たちが話し合いを始め、それが少しずつ大きな動きになり、具体的な形となっていった。その結果、大きな改革を起こした年に入学した生徒たちが卒業した2002年に、「堀川の奇跡」と呼ばれる現象が起こったのだった。

 本のタイトルを見て、単に現役大学合格者数を驚異的に増やすためのひみつが書かれている、と思った人は読んでがっかりするかもしれません。
 けれども、最後まで読めば、本当の教育とはなんなのか? ということが書かれている本だと思うのではないでしょうか。
 堀川高校では、保護者が少し不安になるほど、受験に直接関係のないことがたくさんあるといいます。それは、大学合格がゴールだと考えているのではないからです。堀川高校の先生たちは、「先の長い人生を生きていくための夢をかなえるためには希望する大学に合格することが大切であり、かつ、将来何をするにしても社会で多くの人と関わって生きていくための力もしっかりとつけることが大事」だと考えているのです。
 堀川高校で行われている教育は、魔法ではありません。やはり、やるだけのことはやっているのです。でも、その方法が違うのです。人と関わりながら、いろいろなことを精一杯やることのできる人は、受験に向かったときも大きな力を発揮できるのだろうな、と思いました。この高校では、その独特の授業に多くの時間を費やさなければならないため、最後の模試までに受験勉強がまにあわないため、A判定を取れる生徒はほとんどいないそうです。それでも、9月初めの文化祭では3年生がいちばん熱中して準備をしているそうです。そんな生徒たちが、最後には「この大学に入って学びたい」という気持ちによって現役合格をしていくのだそうです。

 「名のある大学に入ること」が目的なのではなく、「大学に入ってなにをやりたいか」という目標をきちんと持っていることが大切なことなど、いろいろなことを考えさせられた本でした。

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